研究班情報

宇宙電送と無重力環境下での動作試験にも成功した
「3Dプリント人工呼吸器モデル(3D Printable Ventilator model)」
に関する情報提供および実用化プロジェクトについて  
(最終更新日 2020年4月8日)

発明者の石北直之から感謝と進捗報告

皆さまへ,サンプルデータのテストプリント無償ボランティア様へ

 2020年3月27日(金)の本プロジェクトの紹介後,国内外から多数のお問い合わせを頂き大変感謝しています。さらに, このプロジェクトに対して,ご支援やご寄付の申し出などが寄せられ,感謝すると同時に身の引き締まる思いです。 27日以来本日まで,プロジェクトチームの立ち上げと本プロジェクトの推進を最優先にしたため, 皆さまへのいろいろな返信や御礼が滞ってしまったことをまず,お詫び申し上げたく思います。

 また, 3Dプリントの無償ボランティアご協力者から多数の進捗などのお問合せが(20ヵ国以上から)SNS等でありましたので, 皆さまへの御礼とともに,共同代表の木阪智彦(広島大学, トランスレーショナルリサーチセンター バイオデザイン部門) とプロジェクトチームメンバー*と相談して,本プロジェクトの現在の進捗状況の報告と寄せられている様々なご質問に対して ご回答することにしました。

 皆さまからの重要なご質問を以下の様にまとめそれぞれ回答いたします。


Question1: 本プロジェクトの当面の目標について正しくおしえて下さい
回答:
 それは,わが国においてPMDA(医薬品医療機器総合機構)による審査と厚生労働大臣による承認を得ることで, 本機器を国際的に通用する医療機器として確立することです。このため,現在すでに,医療従事者,研究者のみならず, 必要な分野の学際的なエキスパートや産業界の関係者からなるプロジェクトチーム*を立ち上げ,PMDA審査の準備を開始しています。
Question2: 無償ボランティアによる3Dテストプリントは製造準備となるのですか。
どうすれば実際の人工呼吸器をつくれるのですか?
回答:
 これに関して,多数のお問合せを受けています。また,『人工呼吸器の製造要件』についてのご質問も同じ内容と思います。 今まで,発明者である私自身から十分なお答えができず,繰り返し質問を受けておりました。 本日となりましたが,以下に回答いたします。
人工呼吸器は生命維持に直接関係し,人体へのリスクの高い医療機器です。そのため実際に患者さんに使ってもらう前に, 工学的,医学的な確認作業が必須とされます。そのため,一般に人工呼吸器は日本を含む国際社会で,「クラスIII,高度管理医療機器」 に分類されており,わが国では,PMDAにより本機器は,品質,性能,使用目的に関して審査を受け認証(承認) を受けることが必要となっています。また,臨床現場で使用するためには,本機器を責任をもって製造販売できる方(企業等)が, 医療機器製造販売を厚生労働省から認可されることが要件となっています。
 したがって,本機器に関して,医療機器製造販売承認申請し認可された方(企業等)以外の方は,実際に本データ(製造データ) を使用した人工呼吸器を製造販売・流通してはいけません。したがって,今回,精度の高いテストプリント結果を私に直接報告してくださった方であっても, 本データを直接,その方に提供することができませんでした。大変申し訳ありませんでした。また,今回, 本デバイスのテストプリントご協力を頂くために,送付したサンプルデータは, 上記の理由から,安全性を担保するための法規制上, 内部構造を埋めたサンプルデータであり,実際に人工呼吸器として動作できるものではありませんでした。ご質問から判断して, いろいろな誤解をまねいたことは,情報提供が短期間の間に十分できなかったためであり,今後,プロジェクトチームの支援により, 速やかに改善していきたく思っています。
Question 3: それでは何のために無償ボランティアは今回テストプリントを
おこなったのですか?
回答:
 今までの歴史上, 3Dプリントされた医療機器としての人工呼吸器は存在していません。 なぜなら現在多くの3Dプリンタ機種が流通されている中で, どのような機能もった機種がこの人工呼吸器の出力に適しているのかも分かっていなかったからです。 今回,ボランティアの皆さまにより,実際に様々な機種で実際に出力をして頂いたことで,それが多少とも分かり, 本デバイスのデザインの改善や, より容易な製造マニュアル作成などに繋げることができました。さらに,以下のことも学べました。

1. プリント出力における均一性を担保する必要性やその条件
2. 品質管理と認証(承認)プロセスのためのプロジェクトチームの必要性
3. 一定機能を有する3Dプリンターの世界での普及状況を知る重要性

などです。
 今まで,プリントされ,送られてきた造形物につきましては, なんらかの形で皆様への謝意を伝えたく,その方法を検討したく思います。
Question 4: 今後はどの様な協力が必要となるのでしょうか?
回答:
 このプロジェクトには今後も,様々な職種,立場からの支援が必要です。また,実際に認証(承認)を受けるまでは研究資金も必要となります。
 そこで,無償ボランティアとして今まで応援してくださった方には,御願いがあります。これからも本プロジェクトの重要性を周りの人に伝えていって下さい。 現時点で医療機器認証(承認)の早期の取得のために,実用化研究実施に際しての社会的支援,特に,資金調達が最も必要とされるからです。 その内容に専念するため,本日をもちまして,テストプリントボランティアご協力募集は, 一旦中断させていただきたく存じます。
 今までテストプリントを通してお付き合いいただいた,無償ボランティアの皆さまにはこれからもプロジェクトの進捗を見守っていただけましたら幸いです。

 今後,このURLで, 適宜,進捗などをご報告申し上げると同時にSNSなども利用して情報発信をおこなっていく予定です。

 

最後に

 今までの,皆様のご理解とご協力に再度,深謝いたします。皆さまのおかげで,約10日間の短期間にここまでプロジェクトを立ち上げることができました。 これからも,世界で難局にあえぐ患者さまを一刻でも早く救うために,医療における生命維持活動を, 信頼される技術を使い,プロジェクトチームが一丸となり, 医療機器開発を通して支えて行きたいと思っています。

2020年4月8日
石北直之

 


*本プロジェクトチームの主要構成メンバー
【代表】
 石北直之  (国立病院機構新潟病院
臨床研究部医療機器イノベーション室長,内科医長)
【共同代表】
 木阪智彦  (広島大学,トランスレーショナルリサーチセンター
バイオデザイン部門 部門長、准教授)
【プロジェクトディレクター】
 前田祐二郎  (東京大学医学部附属病院 特任助教 /
ジャパン・バイオデザインディレクター)
【プロジェクトメンバー】
 小蜥q義  (筑波大学医学医療系教授 /
つくば臨床医学研究開発機構TR推進 ・ 教育センター長)
 鳥山美由紀  (あめちかる 代表)
 池野 文昭  (Stanford Biodesign, Stanford University、
Program Director (U.S) Japan Biodesign)
 山下大地  (株式会社浜野製作所)
 藤田 隆行  (株式会社オーケー光学、元株式会社ニュートン)
【アドバイザー ・ 経理責任者】
 中島孝  (国立病院機構新潟病院 院長)

 


 


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