医療機器イノベーション研究室

ご挨拶

当研究室は、医療の進化と患者の安全を重視し、デバイスの設計や新たな手法の開発、社会実装に取り組んでいます。 私たちの使命は、革新的なアイデアとテクノロジーを活用して、より効果的な医療機器を実現することです。 医療機器の効率性と使いやすさを向上させるため、既存の機器の工夫や改善にも注力しています。 また、リスク低減と患者安全のための手法開発にも取り組んでいます。

私たちは、論文発表や学会発表を通じて成果を共有し、より効果的な普及方法を模索しています。 特に、VR技術を活用したハイクオリティな教育コンテンツを作成し、オンデマンドで学習するスタイルを提供することで、多くの人々に効率的かつ効果的な教育を提供したいと考えています。

これまでの研究は支援者の皆様からの寄付金と経済産業省・AMEDの研究助成金のおかげで実行することができました。 心から感謝申し上げます。 これからも医療の未来を形作るために全力で研究に取り組んでいきますが、研究には多額の費用がかかります。 私たちの研究活動は、皆さまの温かいご支援に支えられています。 寄付金は医療の進化と患者の安全を追求するために必要不可欠です。 皆さまのご寄付を何卒よろしくお願い申し上げます。

2023年6月5日
医療機器イノベーション研究室
研究室長 石北 直之(内科医長)



主な実績

再使用可能な汎用吸引チップ「SPUTA VACUUMER®」の開発と薬事承認(2021年7月)
私たちは、臨床現場における吸引作業の効率化と安全性向上を目指し、再使用可能な汎用吸引チップ「SPUTAVACUUMER®」を開発しました。 この革新的なデバイスは、低侵襲で高い吸引効果と使いやすさを実現しました。 臨床現場での使用を経て、多くの患者様や医療従事者から好評を得ています。
単回使用ガス式肺人工蘇生器「MicroVent®V3」の開発と薬事承認(2021年8月)
私たちは、緊急時の呼吸サポートにおいて最適な解決策を提供するために、単回使用ガス式肺人工蘇生器「MicroVent®V3」を開発しました。 このデバイスは、超コンパクトなサイズでありながら、高いパフォーマンスと操作の簡便さを備えています。 2021年8月には、厳しい薬事承認プロセスを経て正式に承認を得ることができました。
3Dプリント可能な人工呼吸器「?VENT®」の開発(COVIDVENTILATOR PROJECTの成果)
私たちは、国立病院機構新潟病院の臨床研究部医療機器イノベーション室長である石北直之医師が 2015年から取り組んでいる3Dプリント人工呼吸器モデルの研究成果を活用し、 世界中の医療現場で生命維持活動を支援するための3Dプリント可能な人工呼吸器「?VENT®」の開発に成功しました。



現在の取り組み

【VRを用いた教育コンテンツの制作研究】
当研究室では、JOLLYGOODのAMED事業の分担研究として、SPUTA VACUUMERおよびMicroVentV3の臨床利用の様子を撮影し、オンデマンドで視聴可能な教育コンテンツを制作しています。 さらに、神経筋疾患患者や重症心身障碍児者に対する日常ケアやリハビリの様子も、教育コンテンツとして制作する予定です。


VRを用いた教育コンテンツの制作研究

【SPUTA VACUUMER®の量産体制構築】
SPUTA VACUUMER®の量産体制を本年度中に整え、2024年4月の発売開始を目指して準備中です。 より安全にデバイスを扱えるようにするための追加部品の開発も予定されています。


SPUTA VACUUMER®

SPUTA VACUUMER®とは・・・ 患者の気道から体液を吸引するために使用される装置です。 吸引チューブと気道内に挿入される吸引カテーテルを連結する部材として機能します。 本物品は、誘導管本体と接続管、中蓋、先端キャップから構成されており、これらが連結されています。 使用時には、中蓋が開き、先端キャップも開いた状態となります。 また、誘導管本体は連続的な曲面を持ち、吸引チューブの固定に役立つホルダーも備えています。 SPUTA VACUUMERは、喀痰吸引の効率を向上させ、低侵襲な喀痰吸引を実現するための誘導管として機能します。
【MicroVent®V3の量産体制構築】
MicroVent®V3の量産体制を整え、2024年4月の発売開始を目指して準備中です。


MicroVent®V3

MicroVent®V3とは・・・ 自動で開閉動作するリリーフ弁であり、人工呼吸器や吸入麻酔器に使用されます。 ケーシングにはメインポート(気体供給口)、排気ポート(排気口)、パワーポート(気体導入口)があります。 患者に供給される気体はパワーポートから導入され、メインポートを通じて患者に供給されます。 患者の気道内圧が設定圧力を超えると、弁体が開弁し、排気ポートから気体が抜け出すことで肺の過剰な膨張を防ぎます。 設定ダイヤルを使用して圧力を調整し、ロック解除ボタンでロック機能を解除することができます。 また、自発呼吸弁が搭載されており、患者が自発呼吸する際に開弁可能となっています。
【3Dプリント可能な人工呼吸器「?VENT®」の社会実装】
私たちは、3Dプリント可能な人工呼吸器「?VENT®」を無償で公開することを目指しています。 販売目的でないため、薬事承認申請は不要であることが確認されましたが、 安全な運用のためには、データを公開するだけでは事故を防ぐことができません。 そのため、一個人や一病院が公開するよりも、世界保健機関(WHO)のような世界的機関がコントロールすることが適切と考えており、 データ譲渡のための交渉の準備を進めています。


3Dプリント可能な人工呼吸器「?VENT®」

?VENT®とは・・・ 「?VENT®」は3Dプリント可能な人工呼吸器であり、COVIDVENTILATORプロジェクトの一環として開発されました。 この人工呼吸器は、空気圧のみを使用する従圧式であり、電力を必要としません。 ボディ、弁、螺旋バネ、圧力調節ねじの4つの部品から構成されており、 基準を満たした3Dプリンターとネット環境があれば製造・検品後に使用することができます。 使い捨て可能なので、新型コロナウイルス肺炎の一時期や手術/処置中、MRI中などで使用されることが想定されています。 「?VENT®」はシンプルで低コストな人工呼吸器であり、3Dプリント技術を活用することで広く普及させることを目指しています。
【聴診補助用気泡緩衝材「CHO-SHIN UP!®」の製造装置開発】
社会実装において重要な要素は、低コスト化です。そのため、低コストで製造可能な卓上製造機の開発を予定しています。


聴診補助用気泡緩衝材「CHO-SHIN UP!®」

CHO−SHIN UP!®とは・・・ 気泡緩衝材を用いた聴診補助具です。 透明またはカラーのポリエチレンシートから成り、一方のシートに空気を封入した突起があります。 もう一方の平らなシートには着脱が容易な接着剤が塗布されており、聴診器のダイアフラム(チェストピース)面に貼付して使用します。 これにより、聴診器と患者の密着性を高め、伝導音の聴取や快適性の向上に役立ちます。 また、気泡緩衝材のサイズは聴診器のダイアフラム面に収まるように設計されており、安価で製造可能です。 ディスポーザブル化も可能であり、感染症予防にも貢献します。
【新しい胸腔ドレナージシステムの設計と開発】
新しい胸腔ドレナージシステムの試作品製作と動物試験を神戸大学にて行う予定で準備を進めています。


新しい胸腔ドレナージシステム

新しい胸腔ドレナージカテーテルとは・・・ 本デバイスは、がん性胸水の排出を目的として開発されました。 従来の方法では、ドレナージカテーテルを挿入し、陰圧をかけて胸水を除去していましたが、 カテーテルの太さや留置手技の難しさ、陰圧水封システムの不便さなどの問題がありました。 そこで開発された新しい方法は、T字型シート状カテーテルを胸腔内に留置し、都度陽圧換気することで胸水を排出するものです。 このカテーテルはシリコン製で、カテーテルの側端が胸腔内に広がってカエシの役割を果たし、 シート状の部分には逆止弁としてスリット状の開口部があります。この方法により、カテーテルの苦痛や生活制限が軽減され、 QOLの向上が期待されます。 さらに、陽圧式胸水ドレナージ法による早期の胸水管理は、窒息や心負荷による死亡リスクの減少や延命効果も期待されます。
【超小型簡易吸入麻酔器「嗅ぎ注射器/VapoJect®」の実用化研究】
超小型簡易吸入麻酔器「嗅ぎ注射器/VapoJect®」の試作品製作と動物試験を神戸大学で行う予定で準備しています。


超小型簡易吸入麻酔器「VapoJect®」

嗅ぎ注射器/VapoJect®とは・・・ 簡易吸入麻酔装置であり、手のひらサイズのデバイスです。 この装置を使用することで、麻酔バッグと注射器を一体化させ、 注射器から麻酔バッグ内に麻酔液を注入し、簡単に麻酔ガスを生成することが可能となります。 また、痛みを感じさせることなく患者を眠らせることができます。 この装置は一般の方でも使いやすい設計になっています。
【運動障がい者に対する非接触型スイッチシステムである補強・代替ジェスチャインタフェース(AAGI)】
AAGIは、使用者の小さな動きを市販の3Dカメラで認識し、自分自身のパソコンへの入力や周囲の環境制御を行うアプリケーションシステムです。 検出精度が高く、セットアップが簡便で、非接触で使用するというコンセプトで開発されたものです。


補強・代替ジェスチャインタフェース(AAGI)

詳細はこちら https://niigata.hosp.go.jp/info/aagi/index.html



私たちの研究室は医療機器のイノベーションに積極的に取り組んでいます。 最新の取り組みについては、当研究室のウェブページをご覧ください。 私たちは医療の進化と患者の安全を重視し、 革新的なアイデアとテクノロジーを活用して医療機器の効率性と使いやすさを向上させることを目指しています。



業 績 目 録

researchmap (JST)
https://researchmap.jp/ishikita_vj/


1.著書
・嗅ぎ注射器ができるまで, 石北 直之, LiSA : life support and anesthesia 別冊 27巻 1号, 2020


2.論文(原著)
・Novel 3D Printable Aspiration Device “SPUTA VACUUMER®” Designed to Minimize Invasion,
 Naoyuki Ishikita, IEEE Open Journal of Engineering in Medicine and Biology (IEEE OJEMB), 2022

・将来の有人宇宙活動における3Dプリント簡易吸入麻酔器(嗅ぎ注射器)の有用性の検討, 石北 直之,
 麻酔, 68巻 増刊, 2019


3.招待講演(国内)
・3Dプリント人工呼吸器”?-VENT®”, 石北 直之, TCT Japan, 2024年1月31日

・新たな医療機器開発と呼吸リハビリテーションへの応用, 石北 直之, 日本ヒューマンケア・ネットワーク
 学会, 2023年12月10日

・AQUAID プロジェクト:人工呼吸器ユーザーに沖縄ダイビングの感動を!!, 石北 直之, 琉球リハビリ
 テーション学院 市民公開講座, 2023年11月3日

・DXと医療機器、機器開発, 石北 直之, 琉球リハビリテーション学院, 2023年9月15日

・宇宙における麻酔, 石北 直之, 日本麻酔科学会2023度支部学術集会, 2023年9月9日

・未来を拓く医療イノベーション 石北直之の挑戦と創造性, 石北 直之, 第256回 おおどおり健康教室,
 2023年7月22日

・嗅ぎ注射器, 石北 直之 (STONY & Co.), SPACETIDE AXELA DEMODAY FY2022, 2023年5月12日

・小児神経科医の目指す、医療と医学研究の将来, 石北 直之, 第64回 日本小児神経学会学術集会,
 2022年6月2日

・3Dプリント可能な人工呼吸器開発実用化プロジェクト, 石北 直之, 第49回集中治療医学会学術集会,
 2022年3月19日

・新しい喀痰吸引法「バキューミング」, 石北 直之, 第42回日本呼吸療法医学会学術集会, 2020年12月

・3Dプリント可能な人工呼吸器プロジェクトの進捗とそのインパクト, 石北 直之, 第58回 日本医療・病院
 管理学会, 2020年10月


4.招待講演(海外)
・Anesthesia in Space, Naoyuki Ishikita, Healthcare for Space, Space for Healthcare, 2023年9月8日

・Revolutionizing Tracheal Suctioning: The SPUTA VACUUMER® Offers a Minimally-Invasive and
 Cost-Effective Solution,Naoyuki Ishikita, The 12th Critical Care Conference in Thailand 2023 and
 the 4th Joint JSICM-TSCCM Conference, 2023年7月6日

・Addressing Global Health (specifically COVID-19) with Space Medicine on Earth, Naoyuki Ishikita,
 AP-SGOW, 2020年11月


5.科学研究費助成事業・各種助成金
・「簡易吸入麻酔器の弁を用いた応用製品3種と麻酔薬リサイクルシステムの開発」, 群馬県ぐんま
 新技術・新製品開発推進補助金, 2018年〜2019年

・「麻酔ガスリサイクルシステムの開発及びMR医療トレーニングシステムの開発」, 群馬県立産業技術
 センター公募型共同研究事業, 2018年〜2019年

・「新しい体液誘導管の開発」, 群馬県医福工スタートアップ補助金, 2018年〜2019年

・「3Dプリント可能な人工呼吸器実用開発研究」, 経済産業省 令和2年度 経済産業省 ウイルス等感染症
 技術開発事業, 2020年〜2021年


6.知財
特許
・2011年5月31日 PCT/JP2012/064069, 6156799, 麻酔薬吸入補助装置及びそのアタッチメント  (VapoJect®), 石北 直之

・2015年12月31日, PCT/JP2016/089187, 6780861, リリーフ弁(MicroVent®), 石北 直之

・2019年4月3日, PCT/JP2020/015397, 6557892, 聴診補助具及び聴診器(聴診アップ!/CHO-SHIN  UP!®?), 石北 直之

・2020年1月24日, 特願2020-010421, 特許未成立, 胸腔ドレナージ用カテーテル、及び胸腔ドレナージ  システム, 石北 直之

・2020年7月9日, PCT/JP2021/033546, 特許未成立, 被吸引物誘導管、及び被吸引物吸引システム
 (SPUTA VACUUMER® Type1), 石北 直之

・2020年7月18日, 特願2020-123336, 特許未成立, 人工呼吸器(MicroVent® V3), 石北 直之

・2020年7月18日, 特願2020-123346, 特許未成立,人工呼吸器(MicroVent® V3) , 石北 直之

・2020年10月8日, 特願2020-170776, 特許査定済, リリーフ弁及びリリーフ弁の製造方法, 石北 直之

・2020年10月19日, 特願2020-175256, 特許未成立, 揮発性吸入麻酔薬の吸着剤, 石北 直之

・2021年3月31日, 特願2021-062367, 特許未成立, 被吸引物誘導管、及び被吸引物吸引システム  ②(SPUTA VACUUMER® Type2), 石北 直之

・2021年12月28日, 特願2021-215061, 特許未成立, 情報処理方法、プログラム、非一時的コンピュータ  可読記憶媒体及び電子デバイス, 石北 直之、中島 孝

意匠
・2020年6月9日, 意願2020-11450, 意匠登録第1674640号, 被吸引物誘導管、及び被吸引物吸引システム(SPUTA VACUUMER® Type1), 石北 直之

・2020年7月15日, 意願2020-14625, 意匠登録第1674656号,人工呼吸器(MicroVent® V3) , 石北 直之

実用新案
・2022年1月25日, 実願2022-000190, 登録済, 流体中継支持装置, 石北 直之

・2022年6月28日, 実願2022-001901,登録済, 喀痰吸引学習用モデル肺, 石北 直之


商標
・2019年8月30日, 商願2019-116220, 登録6265770, VAPO JECT, 石北 直之

・2019年8月30日, 商願2019-116222, 登録6265771, CHO-SHIN UP!, 石北 直之

・2019年8月30日, 商願2019-116221, 登録6265769, MICRO VENT, 石北 直之

・2019年8月30日, 商願2019-116223, 登録6293802, SPUTA VACUUMER, 石北 直之

・2019年8月30日, 商願2019-116218, 登録6312421, STONY, 石北 直之

・2020年7月21日, 商願2020-090299, 登録6423017, ? VENT, 石北 直之


7.社会貢献活動

・2022年3月30日 - 現在
 「KYOTO STEAM 2022 国際アートコンペティション」展覧会

・2022年3月11日 - 2022年3月31日
 柏崎市 COVIDVENTILATOR PROJECT 特設展示① 「#024U―酸素をあなたに」

・2022年3月17日 - 2022年3月31日
 柏崎市 COVIDVENTILATOR PROJECT 特設展示② 「#024U―酸素をあなたに」

・2022年4月1日 - 2022年5月9日
 柏崎市 COVIDVENTILATOR PROJECT 特設展示③ 「#024U―酸素をあなたに」

・2022年6月15日 - 2022年6月16日
 #024Uイノベーションデイ 2022 in 柏崎

・2023年5月3日 - 2023年5月5日
 ファブリカリウム東京 2023 in 日本科学未来館

・2023年6月14日 - 2023年6月16日
 #024Uイノベーションデイ 2023 in 柏崎





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